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「オメガ スピードマスターPRO」impressionオーバーホール編 ~組み立て~

前回、部品の状態を確認しながら分解を行いましたので
今回は部品を洗浄してから組み立てます。


分かり辛くてすいません・・・。顕微鏡の接眼部からの撮影です。
ここは軽い油を注します。量は受け石の直径の半分から2/3ぐらいです。


その後、竜頭周りを組みます。


裏押えまで組みました。


そして穴石を入れ、12間計車、リセットレバー、受け等を組んでいきます。
裏輪列から組むと、表輪列の受けが容易に組み立てられます。


香箱を組みます。オイラーで注している所に重い油(D5)を注します。
ここに油を注し忘れるとクロノグラフストップ時にも12間計針がつられて動いてしまうことがあります。


香箱真にも忘れずに。


輪列受けの裏側にある丸穴車を組みます。


こんな感じで各歯車を地板に乗っけます。
香箱の真上にある角穴車と丸穴車を上手に噛み合わせる為、竜頭を回しながら輪列受けを組みます。
一般的な構造は輪列受けの上に角穴車・丸穴車があるので、先に表輪列を組んでから竜頭周りを組んでも問題ありませんが、861は竜頭周りを先に組んでいないと非常に受けを乗せにくい。


こんな感じで竜頭を回しながら受けを組みます。ガンギ車は邪魔なので後でのせます。そして歯車のアガキをチェック。


ガンギ車を組み受けをのせます。861はガンギ車の受けが独立しております。
この後、輪列を空回りさせて作動をチェック。横から見て歯車の噛み合い、振れ、アガキをチェックします。


アンクルを組み、ほんの僅かゼンマイを巻きアンクルの動きをチェックします。
アンクルが正常であればちょっと触っただけでも元気にピンピン弾きます。


アンクルのツメ石にツメ石用の拡散しづらい油(9415)を塗布します。
ここは気を抜くとすぐに付け過ぎてしまいます。この後テンプを乗っけます。


磁気抜きです。磁気帯びしていてもしていなくても一応抜いておきます。


ここまで組んだらテンプ周りのチェック。顕微鏡でヒゲの偏り、水平、アオリなどをチェック。
結構これが難しい。修理屋さんの腕の見せ所。わたしゃ、これでかなり苦労しました。


ウィッチで精度測定。片振りを修正、緩急真で歩度を調整して5姿勢で精度を計ります。画像は調整した後の精度です。
先ずはゼンマイ全巻での精度。DU(ダイアルアップ、文字板上)で日差+1秒。


6U(6時方向上)で日差+5秒


9U(9時方向上)で日差+4秒


12U(12時方向上)で日差+6秒


3U(3時方向上)で日差+7秒


ゼンマイを3~4巻ぐらい戻してもう一度測定。角穴車が見えないので適当にゼンマイを解きます。
朝ゼンマイを巻いて、翌日ゼンマイを巻く直前の日差の変化が少なければ少ないほど精度がいいということです。
ちなみにこの時計ではDUで日差-3秒


6Uで日差+1秒


9Uで日差-1秒


12Uで日差+3秒


3Uで日差+10秒
とりあえずはこんな感じで歩度を調整します。
最終の調整は機械をケースに組んで測定します。


歩度調整が終わったら4番車の出車をはめます。
そのとき重宝しているのが穴石入れ(調整)器。
新品で買うとムチャクチャ高いのですが画像のやつはラ・ショード・フォンのアンティークウォッチマーケットに
仕入れに行ったときに買ってきました。とっても安く、工具は新品で買うのが馬鹿らしくなります・・・。


出車は強めに圧入しなくてはいけないので、そのまま押し込むと穴石がずれてアガキが大きくなってしまいます。
そこで、この工具を使い、穴石を直接固定して出車を押し込んでいきます。


このように出車が伝え車のツラ位置に来るように調整します。
画像では出車がちょっと低く見えますが気のせいです・・・。
ちなみに出車の右側にあるデッパリは伝え車と出車の歯の噛み合わせを調整する偏心ネジです。
噛み合わせの深さは3分の2程度です。


各穴石に油を差しツツカナをはめ込みます。


クロノグラフランナー押えです。前回も書きましたがプラスチックの部品は嫌いです。
そこで金属の押えに交換しました。金属は上下2つに分かれています。


やっぱり金属パーツの方がかっこいい・・・。
クロノグラフユニットの撮影を忘れていました。
まあ、取り敢えずはレバーやらカムやらを先に組み、その後伝え車・リセットハンマーを組んでいきます。


裏輪列関係を組みます。組んでいる部品は12間計リセットハンマーバネです。
機械が組み終われば文字板を乗せて針を着けていきます。実は針付が一番面倒くさい・・・。



使う治具はこいつ。
右側の二つのボタンはスタート・ストップ・リセットのプッシャー、
中心と3時側の出っ張りはクロノ車・30分計車の穴石押えです。この押えがあるため安心して針を付けることができます。


針をこんな感じで取り付けていきます
工具先端が樹脂で出来ているので針が傷付きにくいです。


先ずは12間計針から、少しずらして・・・


リセット! ちゃんと戻ればOK。


次に30分計針。今回は針が壊れたため新しいのを使用。新品の針のハカマは小さいため、エグリ棒で少し広げてやります。
広げすぎると面倒臭くなりますが・・・。


30分計針のリセット位置がよければ秒針・長針・短針を着けていきます。


で、クロノ針。こいつの位置決めが一仕事。真上から慎重に位置を決めていきます。
私は左眼が効き目のため、最初の頃はちょうど12時の所に着けたつもりでも僅かに左にずれていました。
最近は私から見てほんのちょっと右にずらすとちょうどいい具合になります。
ゆっくり慎重に入れるとずれてしまいますので、叩いて瞬間的に入れてやります。
ただ、叩くことによってかなりの負荷が受け石に掛かります。その為「受け石押え」が必要不可欠になるのです。


閑話休題。
針の着け外しをしているとハカマが緩んでガバガバになる事がよくあります。
以前はこんな感じでツツカナつぶしでハカマを締めていました。
しかし、ツツカナつぶしでは一箇所しか締められないので緩み易くなってしまいます・・・。


元々はヒゲゼンマイの中心にある「ヒゲ玉」を締めるものですが、こいつを応用してハカマ全体を均等に締めることができます。


エアダスターでチリを吹き飛ばします。


手動のダスターで文字板のチリを吹き飛ばします。


裏ブタパッキンを新品に交換。お客様のOH時にはこのパッキンは必ず交換します。


シリコングリスを塗布します。


裏ブタを締め・・・


クロノ針を帰零して・・・


ベゼルをクロノ針に合わせセロテープで仮止め。


裏ブタ締めでパチンとはめてやります。
べセルには個体差があり、硬すぎるものとユルユルなものあります。固くてはまらない場合はベゼルの内周を少しすり、
緩い場合は接着剤で固定してやります。

と、まぁ、こんな感じでOH終了です。

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